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平和への祈り
戦争の本当の恐ろしさを知る人こそ,平和への祈りは尽きません。
被爆者の体験談をもとに,旧三和町に生まれ育った実在の人物をモデルに描かれた「黒い雨」は,優れた文学作品であるとともに,私たちに平和の尊さを教えてくれるのです。
文学碑
戦争はいやだ
勝敗はどちらでもいい
早く済みさえすればいい
いわゆる正義の
戦争よりも
不正義の
平和の方がいい
井伏鱒二著「黒い雨」の一節より
黒い雨
旧三和町小畠の商店街裏の丘に,重松静馬さんの生家があります。
「この数年来,小畠村の閑間重松は姪の矢須子のことで心に負担を感じて来た」
この書き出しで始まる井伏鱒二の代表作「黒い雨」は,昭和三六年春に完成した重松静馬さんの作品をもとに書かれました。
主人公「閑間重松」は,重松さんがモデルになっています。
小畠には代官所があり(現在の役場があるところ),たくさんの古文書が残されていました。井伏氏は,この古文書をもとに作品を書いたこともあり,三和町に関係する小説は,「黒い雨」以外にもたくさんあります。
井伏氏はそんなことから知り合いになった重松さんと一緒に釣り宿に泊まったとき,原爆を受けた姪の話になり,自分の記録もあるからというので,後に「黒い雨」と改題される,「姪の結婚」を書くことになりました。
重松さんの被爆日記や,広島や小畠の人々の体験談などをもとに,昭和四〇年一月,井伏氏は「新潮」に「姪の結婚」の連載をはじめ,八月に「黒い雨」に改題。翌年九月に作品は完成しました。
現在重松さんの息子さん夫婦が住まれている家には,当時の井伏氏からの書簡が多数保存されています。「父は井伏さんの作品が好きで,自分もよく似た表現をしていたのですよ」
父,静馬さんのこと,井伏氏のことなど,思い出は尽きません。
「黒い雨」が映画化,ドラマ化された時には出演者がお墓参りに来たそうです。
戦後70年。
実際に戦争を体験した人は少なくなり,あの悲しみ,あの怒りを忘れつつある現在,「黒い雨」が伝えようとしたものを,私たちはもう一度考えなければならない時代を迎えています。